エルダーフラワーの和名は「セイヨウニワトコ」。
では、日本の山や川べりに生えている「ニワトコ」と同じものなのでしょうか?

この記事では、エルダーフラワー(セイヨウニワトコ)と日本のニワトコの違いをまとめました。
先に結論
どちらもニワトコ属の木ですが、別の種類です。
いちばん分かりやすい違いは実の色。セイヨウニワトコは黒、日本のニワトコは赤に熟します。
日本のニワトコの花を、エルダーフラワーと同じように使うのはやめておいたほうが無難です。
名前が似ているのは、同じ仲間だから
どちらもニワトコ属(Sambucus)の木です。
- セイヨウニワトコ……学名 Sambucus nigra。ヨーロッパ、西アジア、北アフリカに自生
- ニワトコ……学名 Sambucus racemosa subsp. sieboldiana。日本全国と朝鮮半島、中国に分布
学名を見ると、属の名前は同じでも、その後ろが違います。同じ属の、別の種ということです。

「セイヨウ」がつくだけの違いじゃないんだね。
違い1:実の色
見分けるならここがいちばん簡単です。
セイヨウニワトコの学名 nigra は「黒い」という意味です。その名のとおり、実は熟すと黒くなります。
一方、日本のニワトコの実は赤から暗い赤色に熟します。梅雨どきの6〜7月ごろに、赤い実の房をつけている姿を見かけることがあります。
- セイヨウニワトコ……実は黒
- ニワトコ……実は赤〜暗赤色
違い2:花の時期と香り
- セイヨウニワトコ……6〜7月ごろ、クリーム色の小さな花が集まって、直径20cmほどの平たい房になる。香りが強い
- ニワトコ……春(3〜5月)、淡い黄白色の小さな花をつける
日本のニワトコは、エルダーフラワーより早い時期に咲きます。そして、エルダーフラワーの魅力であるマスカットのような甘い香りは、セイヨウニワトコの花ならではのものです。
違い3:木の大きさ
- セイヨウニワトコ……3mを越すこともある高木
- ニワトコ……高さ2〜6mほど
どちらも、ハーブというよりしっかりした樹木です。
違い4:日本での使われ方
日本のニワトコは、昔から身近な植物として使われてきました。
- 若芽……3〜4月ごろに摘み、天ぷらやおひたしに
- 別名「接骨木(せっこつぼく)」……骨折の治療に用いたことに由来するとされる
一方、ヨーロッパでセイヨウニワトコが親しまれてきたのは、花です。花を砂糖と煮つめたシロップ(コーディアル)や、マスカットの香りのハーブティーとして飲まれてきました。
日本は「芽」、ヨーロッパは「花」。同じ仲間でも、親しまれてきた部分が違うのは面白いところです。
日本のニワトコを、同じように使わないほうがいい理由
日本のニワトコには、青酸配糖体という成分が含まれるとされ、多く食べるのは危険とされています。
下痢や嘔吐などの中毒の報告もあります。
若芽を天ぷらにする地域がある一方で、「たくさん食べていいもの」ではありません。
そして何より、エルダーフラワーとして売られているのはセイヨウニワトコの花です。山で見つけたニワトコの花を摘んで、エルダーフラワーの代わりにお茶にする——これはやめておいたほうが無難です。

名前が似てるから大丈夫、とはならないんだね。
セイヨウニワトコも「使うのは花だけ」
念のため付け加えると、セイヨウニワトコでも、生の実や葉・茎は食べられません。ハーブティーやシロップに使うのは花だけです。
エルダーフラワーの香りや淹れ方、シロップの作り方は、こちらにまとめました。
野山で見かけたら、どう見分ける?
散歩や山歩きでニワトコらしい木を見つけたとき、手がかりになるのは次の点です。
- 季節……春に花が咲いていたら、日本のニワトコの可能性が高い
- 実……梅雨どきに赤い実の房がついていたら、日本のニワトコ
- 場所……日本のニワトコは全国の山や川べりなどに自生している
セイヨウニワトコは、日本では庭木や苗として植えられたものがほとんどです。野山で自然に生えている木は、まず日本のニワトコだと考えてよいでしょう。
見分けがついても、摘んで口にしないこと。
この記事の目的は「使えるかどうか」を見分けることではなく、「別のものだと知る」ことです。
セイヨウニワトコを自分で育てるなら
エルダーフラワーを自分で摘みたい場合は、セイヨウニワトコ(Sambucus nigra)の苗を購入して育てることになります。
- 学名を確認する……「ニワトコ」とだけ書かれた苗は、日本のニワトコのことがある
- 大きくなる前提で場所を選ぶ……3mを越すこともある樹木
- 摘むのは花だけ……実や葉・茎は使わない
「エルダー」「セイヨウニワトコ」「Sambucus nigra」——このどれかが書かれているかを、購入前に必ず確かめてください。
育てるときのポイントはエルダーフラワーはどんな味?の「日本でも育てられる?」の項でも触れています。
「エルダーベリー」はどちらの実?
海外のジャムやシロップで見かける「エルダーベリー」は、セイヨウニワトコの実のことです。
ヨーロッパでは、セイヨウニワトコの果実を果実酒やジャムにすることが知られています。ただしこれは加工したものの話で、先ほど書いたとおり、生の実はそのまま食べられません。
市販のエルダーベリー製品と、庭や野山の実は別物として考えてください。
違いを一覧にすると
- 学名……S. nigra(セイヨウ)/S. racemosa subsp. sieboldiana(日本)
- 自生地……ヨーロッパなど/日本全国
- 花の時期……6〜7月/3〜5月
- 実の色……黒/赤
- 親しまれてきた部分……花(ハーブティー・シロップ)/若芽(天ぷら)
エルダーフラワーを気軽に楽しむなら
エルダーフラワーは、ほかのハーブと合わせると香りの役としてよく働きます。
長野県飯田市山本のケーキとビストロ美城(みき)は、ハーブを育てて、乾かして、ブレンドするところまでを10年以上続け、商品として販売しているお店です。敷地内のハーブ畑で20種類以上を自家栽培しています。
エルダーフラワーが入っているのは、こちらのブレンドです。
⑯ お疲れリセット!元気充電ブレンド
レモンバーム(長野県飯田産)/ローズマリー(長野県飯田産)/ハイビスカス(エジプト産)/エルダーフラワー(ウクライナ産)
※妊娠中の方にはあまりおすすめできません。
エルダーフラワーはウクライナ産、レモンバームとローズマリーは飯田の畑で育てたものです。畑の様子は自家栽培ハーブティーは何が違う?長野・美城のハーブ畑からでご紹介しています。
まとめ
エルダーフラワーと日本のニワトコの違いについて、こちらをお話ししました。
- どちらもニワトコ属だが、別の種
- 見分けるなら実の色。セイヨウは黒、日本のニワトコは赤
- 日本のニワトコは春に咲き、若芽が天ぷらなどに使われてきた
- 青酸配糖体を含むとされ、多食は危険
- 山のニワトコの花を、エルダーフラワーの代わりに使うのは避ける
名前が似ていても、別の植物として扱う。野山の植物と付き合うときの基本です。
最後まで読んでいただきありがとうございました。




コメント