豚の角煮や中華の煮込みから香る、甘くてどこか薬のような独特の香り。その正体が八角です。
星の形をした、かわいらしい見た目のスパイスですが、ひとつだけ必ず知っておいてほしい注意があります。

この記事では、八角の正体と使い方、そしてよく似た猛毒の植物「シキミ」との違いをまとめました。
先に結論
八角は、トウシキミという木の果実を乾かしたスパイス。英語ではスターアニスと呼ばれます。
角煮・中華の煮込み・五香粉に欠かせない、甘く強い香りです。
ただし、日本のお寺や墓地にある「シキミ」の実は形がよく似ていて猛毒。拾った実は絶対に料理に使わず、お店で買った食用の八角だけを使ってください。
八角は、どんなスパイス?
- 植物名……トウシキミ(唐樒)
- 学名……Illicium verum
- 科……マツブサ科シキミ属
- 原産……中国南東部からベトナム北東部。中国が世界の生産の大部分を占める
- 使う部分……星の形をした果実を乾かしたもの
- 別名……スターアニス、大茴香(だいういきょう)
- 香り……甘く強い香り。主な成分はアネトール

「八角」って、角が8つあるから八角なんだね!

そうなんです。星の先のひとつひとつに、つやのある茶色い種が入っています。ちなみに、八角に含まれるシキミ酸は、インフルエンザの薬(タミフル)を作る原料に使われてきたことでも知られています。
ただし、シキミ酸そのものに薬のような効果があるわけではありません。八角を食べても、インフルエンザの予防や治療にはならないので注意してください。
八角の使い方
- 豚の角煮・東坡肉(トンポーロー)……煮汁に1〜2個入れる
- 中華の煮込み・煮卵……しょうゆベースの煮汁と相性がよい
- 五香粉(ウーシャンフェン)……八角を含む、中華料理の代表的なミックススパイス
- チャイやホットワイン……シナモンなどと一緒に香りづけに
使うときのコツ
- 香りがとても強いので、4人分の煮込みで1〜2個が目安
- 割ってから入れると香りが出やすい
- 煮込み終わったら取り出す(かたくて食べられない)

1個入れるだけで、いつもの角煮がお店の味になりそう!
「入れて、最後に取り出す」使い方は、ローリエと同じです。甘い香りのスパイスではシナモンやクローブとも相性がよく、一緒に煮込みに使われます。チャイにはカルダモンと合わせることもあります。
★必ず知っておきたい:シキミとの見分け方
八角とよく似た実をつける木に、シキミ(樒)があります。シキミは、日本のお寺や墓地によく植えられている木で、仏事にも使われます。
シキミの実は猛毒です。植物全体が有毒ですが、とくに実にアニサチンという強い毒が含まれ、食べると嘔吐、意識障害、けいれんを起こし、重い場合は死に至ることがあります(東京都健康安全研究センター)。シキミの実は、植物でただひとつ、毒物及び劇物取締法で「劇物」に指定されています。
- 八角(トウシキミ)……実の先は鋭く尖らず、だんだん細くなる。香りは甘く強い。日本の野外ではほぼ見られない
- シキミ……実はやや小さく、先が針のように鋭く尖る。香りはお線香(抹香)のようなツンとした香り。東北地方南部より南の山地に自生し、お寺や墓地に植えられている

えっ、そっくりな毒の実が、お寺に生えてるの!?

そうなんです。見た目だけで見分けようとするのは危険です。いちばん確実なのは、お店で「八角」「スターアニス」として売られている食用のものだけを使うことです。
守ってほしいこと
- お寺や墓地、山、庭で拾った星形の実は、絶対に料理やお茶に使わない
- 小さな子どもが、シキミの実を遊びで口に入れないよう気をつける
- 口にしてしまったときや、ようすがおかしいときは、すぐに医療機関を受診する
赤ちゃんや小さな子どもには
八角を使った「お茶」を、赤ちゃんや小さな子どもに飲ませるのは控えてください。アメリカでは、家庭で八角のお茶を飲ませた赤ちゃん7人に、神経の症状が出た例が報告されていて、八角に有毒なシキミが混ざっていた証拠も見つかっています。報告した医師たちは「赤ちゃんに八角のお茶を与えるのはやめるべき」としています(論文)。
料理に1〜2個入れて香りをつけ、取り出して食べる分には、ふつうの使い方です。
保存のしかた
- 密閉容器に入れて、湿気と光を避けて保存
- 香りが弱くなってきたら取り替えどき
まとめ
- 八角は、トウシキミの星形の果実を乾かしたスパイス。スターアニスとも呼ばれる
- 角煮・中華の煮込み・五香粉に。4人分で1〜2個、最後に取り出す
- シキミ酸はタミフルの原料になったが、八角を食べても薬にはならない
- お寺や墓地のシキミの実は猛毒(劇物)。先が針のように尖り、抹香の香り
- 拾った実は絶対に使わない。お店で買った食用の八角だけを使う
八角は「お店で買う」もの。それさえ守れば、星形のスパイスは食卓を豊かにしてくれます。
ほかのハーブについてはハーブの種類・名前一覧図鑑にまとめています。
最後まで読んでいただきありがとうございました。



コメント